本当の自分について | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

本当の自分について

その日、僕はいそいそと小学校の同窓会へ足を運んだ。

以前だったら、絶対に参加はしなかったと思う。

僕は小学校の同級生から自ら距離を取るようになった。

昔の自分に蓋をしたのだ。

僕は変わってしまったから。

そんな自分を誰も喜ばないだろうし。

相手にしたくないだろうし。




僕は小学生の頃、

とても快活で

大胆で

馬鹿で

変わってて

面白い子供だった。

同窓会の席で、みんなが僕のことを話してくれた。

僕は自分の話で、腹を抱えて笑った。


自分の事なのに、こんな面白い話は、滅多にないとすら思えた。


僕は自分の事を殆ど忘れてしまっていた。


僕が明るかったのは、小学生までだった。

その後は長いトンネルの中に入り、

出口は見えず、

自分がどんな人間かも忘れてしまっていた。

中学、高校と、僕は明るさを無くし、

大学を卒業し社会人になっても、根っこの部分では屈託を抱えていた。

同窓会の席で、同級生がこう言った。

「~会社に就職するなんて、びっくりしたんだ。そんなんじゃなくてさ、絵描きとか、そっちの方向へ進むもんだと思ってた」

僕は思い出した。

ああ、確かに絵を描くのが大好きだったし、

実際に芸術系の学校へ行こうと思い、

しかし、両親は別の道を望み、

僕自身も、親やその他大人たちの意見を鵜呑みにし、
芸術の道で生計を立てるのは一握りで、

その中に入るのは至難の技で、

こんな僕には到底無理だろうと、自分自身を納得させた。

僕は自分自身が嫌いだった。

自分自身にひとかけらの自信も、

信頼も感じることができなかった。

僕は暗いトンネルの中でもがき苦しみながら、

幾つかのことを体験から学んだ。

血を流しながら。

僕はここに来てやっと、トンネルを抜けることができた、と

感じている。

同級生と昔話をして大笑いし、楽しい時間がすぎて行った。

みんな子どもの頃の思い出をとても大事にしていた。

僕以外の全員が。

また、小学生の頃の想い出を、よくもそんな細かいことまで覚えてるものだと感心させられた。

話題は尽きなかった。


今やってる仕事とか、

そんな話は誰もしないし、誰かが話したとしても、

誰も面白がらなかった。

僕と同じくらい先生に殴られた(当時はそれが普通だった)友人がポツリと言った。

「この年になってさ。何か昔の自分に戻った気がするんだよな。馬鹿だったあの頃の自分にさ。今よ、家族によく馬鹿だって言われるんだ」

僕はハッとし、僕も同じだよと言った。

僕の本質は陰か。

それとも陽か。

僕は昔の自分に会って、本当の自分を再確認した。

友人が僕に語る。

「素の自分でいるのが一番なんだよ。うん、大丈夫、お前はお前のままでいいんだよ」

僕は嬉しかった。

みんな僕のことを憶えてくれいた。

僕は、

自分に帰った。

自分を取り戻した。